Vol.1 Page 1

雑踏―――――。

駅近くの道。
季節の移り変わりの様にゆっくりと見えた。
その時間の流れすらゆっくり見える中を
一人、駅とは逆に歩く。

何度も...何度も他人と肩を触れながら。

何の為に急ぐのだろう?
そんなに良い事が待っているのかい?
僕はまだ夢を見ている。

目を覚ましたくないんだ。
どうしてそんなに騒がしいの?
祭りのような情緒もない。

息づかい...
鼓動...
笑い声。

なんで普通に過ごせるの?

みんな、嘘つきだ......。


明かりが小さく落ちる。
そう、冬の様だ。

隅に倒れ込んでいる人が居る。

耳には誰かの歌声。
それは、何という歌なの?
君は何故歌っているの?

気を抜くと忘れてしまいそうで...
必死にしがみつくんだ。
君も...忘れないで。

闇を見つめる。
君が...そこに居そうだ。
いつかのように、言葉もないまま 僕を見つめる君が。
やがて、僕の横で君が微笑むようだ。

宙で行き場を失う僕の視線...

ほら、誰かの歌が聴こえるよ。
悲しい愛を歌っている。

そうだね...

愛が無ければ......悲しみはなくなるかもしれない。

でも...愛が無ければ......少し寂しい気がする。


僕は一人だよ。

冷たい壁。
無機質な明かり。
歌声。

妙に優しい気がして。

もう少し歩いてゆけそうなんだ。
まわりにはまだ求めてくれる人も居るらしい。
一番遠くに見えていた...今がその幸せかも知れない。


やがて、歌声も離れ。

無機質なものだけの中。
僕が座り込んだ背中に冷たい壁―――。
小さな...小さな明かり。

ただ、座り込んだ


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